昔むかし、野川に要ぞうというひょうきんな男が住んでおった。
ある日のこと、渕に鴨がいっぱい来ていると聞いた要ぞうは鉄砲を担いで出かけて行ったそうじゃ。
要ぞうは、何羽もいる鴨をいっぺんに全部仕留めるために、鴨がいる上の岩に鉄砲をうつという名案を思いついたそうな。
要ぞうが岩に向かって鉄砲を撃つと、小さく砕けた岩が次々と鴨にあたって、鴨は全部気を失のうてしもうたんじゃと。
要ぞうは、喜んで鴨の首を腰の紐に縛ってぶら下げたそうな。
ところが、しばらくすると、気を失っていた鴨が次々と元気になって、バタバタと羽根を動かし始めたそうじゃ。
要ぞうは、あれよあれよという間に空高く飛んで行ったそうな。
要ぞうが、ふと下を見ると、自分の家の上。
「助けてくれー!」 という要ぞうの大声に気づいた要ぞうの女房おるいは外に出てきて、空を見上げてびっくり。
おるいは「腰紐を強くひっぱりなされ!」と叫んだそうじゃ。
すると、腰紐に首を締めつけられた鴨は急に力尽き、要ぞうはちょうど自分の家の前に落ちてきたんじゃと。
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