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四国昔話八十八ヶ所巡り
おんばさま  高知県室戸市・佐喜浜

昔むかし、室戸の佐喜浜にお金持ちの屋敷があった。
その屋敷にはたいそう美しい娘がひとりおって、親御はそろそろ婿を迎えようと考えておったそうじゃ。

そんなある晩のこと、みなれぬ若い男が娘を訪ねてきた。
着ているものもたいそう立派で、立ち振る舞いも上品なため、屋敷の者はどこぞ身分の高い家の息子だろうと思ったそうじゃ。
娘もひと目でその男を好きになった。

それからというもの、男は毎晩のように娘のもとに通ってくるようになったが、名前も住んでいる場所もまったく語ろうとしなかった。

心配した娘の両親は、「今後いっさいあの男を入れてはならん」と、戸締まりをして見張りまでつけたそうじゃ。
ところが、不思議なことに男は毎晩どこからともなく入り込んでは、娘の前に現れた。

そんなことが続くうちに、娘はみもごってしもうた。

娘は思い余って母親に相談すると、「今度男が来たら、別れ際に糸のついた針を男の着物に刺しておきなさい」といわれ、娘は言われたとおり、こっそりと男の着物に糸のついた針を刺してかえした。

次の朝、娘が糸をたどって行くと、佐喜川の上流にある山奥の滝つぼに辿り着いた。
不思議なことに、糸はその滝つぼの中へ消えていた。

娘が滝つぼのほとりに立っていると、ぼそぼそと話し声が聞こえてきた。
「五体に針を刺されちゃあ、おまえさんの命も もう長くはあるまい。じゃが、娘の腹に子ができたのじゃから、おまえの命もこの世に残る」
「そうは言うても、桃の節句の桃酒と端午の節句の菖蒲酒、それに9月の菊酒をいっぺんに飲まれたらおしまいじゃ。腹の子は死んでしまう。」

それを聞いた娘は急いで家に帰り、母親に話して聞かせた。
母親はさっそく三つの節句酒を集めてくると、娘に飲ませた。
するとどうじゃ、娘は急に腹が痛くなって、たらいに7杯もの蛇の子が死んで生まれたという。

たたりを恐れた母親は、蛇の子を裏の竹薮に埋め、そこに小さな祠を建てた。

「おんばさま」と呼ばれるその小さな石の祠は、今も佐喜浜に残っておる。



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